朝まで眠れた!
鍼灸ひののき院長の日野です。
不眠に悩んで来院された方の事例をご紹介します。
■来院された方:一宮市在住、40代女性
■主な症状:不眠、胸のつかえ
〇来院までの経緯
不眠だけでなく、胸のつかえや頭痛など複数の症状に悩んでいた。たくさん薬は飲みたくないので、身体を全体的にみてくれる治療院を探し、当院に来院された。
〇初回来院時の主な悩み
・不眠
・胸のつかえ
・お腹にガスがたまる
〇その他付随する症状
・頭痛
・便秘
・動悸
・慢性的な疲労
・肩こり
・イライラ
〇現病歴
なし
〇鍼灸ひののきの見立て
不眠の症状は、寝つきの悪さ、中途覚醒、寝汗などで、朝起きても疲れが取れないといった状態でした。
初回にお話を伺うと、仕事が忙しく職場でストレスを感じるだけでなく、親との同居もストレスとなっているようでした。
精神的なストレスは気・血のめぐりを滞らせ、不眠や胸のつかえ、頭痛などの症状を引き起こします。ストレス解消にお酒を飲む習慣があります。アルコールは一時的に気のめぐりを良くするため、そういった意味でも身体は滞りを感じていたのでしょう。
まずは睡眠の問題をよくすることが大切です。睡眠によって気や血を補充することができます。
東洋医学では、心身の不調は「内臓の働きやバランスの問題」と捉えます。睡眠は内臓の「腎・肝」が主に関係するので、これらをしっかりさせることがポイントとなります。
腎と関係するもの…腰、骨、膀胱、便通など
肝と関係するもの…筋肉、目、子宮、爪など
(※内臓については、施術についてを参考にしてください。)
精神的なストレス、パソコン作業による目の負担、アルコールなどによって「肝」が疲労し、気のめぐりが悪くなる。眠れないので疲れも取れない。そして、また仕事…という負のスパイラルに陥っているので、鍼灸だけでなく生活習慣も見直して身体を整えていく必要があります。
そして、肝をしっかりさせるには「腎」がしっかりしていないといけません。
腎がしっかりするとリラックスできるようになり、睡眠の質も変化します。
〇鍼灸施術の方針
上記から
「肝と腎の働きを整える」
ことで気のめぐりを促進し、リラックスできる状態をつくれるように、鍼灸をすすめました。
施術のペースは一週間に2回から始めました。
〇施術経過
・1回目
脈診では腎の弱りが感じられ、腹診では瘀血(おけつ…血のめぐりが悪い状態)の反応があった。
首や肩甲骨周りも硬く、交感神経が優位な状態であると考えられる。
仰向けで、流れが詰まっているような感じの部位に、鍼でさするようなソフトな施術。
次に、手足にあるツボに接触鍼(せっしょくしん…鍼を刺さずにツボに触れる手技)。
うつ伏せになってもらい、「腎兪-じんゆ」という腎と関係が深いツボと、ふくらはぎに施術。
最後にもう一度仰向けで、お腹にあるツボ「関元-かんげん」に鍼をして終了。
・2回目
お腹のガスが減り、便通が良いと。不眠は変わらず。
前回施術後、だるさが出なかったため、血のめぐりと関係する鍼を追加。
足にある睡眠と関係する経穴(ツボ)にお灸も加えた。
・3回目
前回後よく眠れたが、だんだんと戻ってきた。
まだ一週間はもたないようだ。頭痛はなく便通もよい。
お家でセルフケアのためにお灸をしてもらう。
・4回目
朝まで眠れる日が出てきた。
お酒を飲まない日を作るようにしたとのこと。とてもいいことです。
鍼灸は週に1回のペースへ。
・5回目
一週間のうち朝まで眠れる日の方が多い。
・6、7回目
睡眠はほぼ問題なくなった。動悸もない。
ただ大きなストレスがかかると、不調になる。
施術ペースは2週間に1回へ。
・8回目~
一番つらかった不眠はほぼ気にならなくなったので、肩こりなど身体的な不調のケアを目的に施術。
セルフケアのお灸と、減酒、早寝などの生活習慣に気を付けていただき、継続中。
〇院長から
主症状の不眠は、比較的早く改善した方だと思います。
ご本人の健康へのモチベーションが高く、セルフケアや生活習慣の改善に取り組んだことが大きかったです。
眠れるようになるとメンタルもポジティブになり、良いスパイラルを作り出すことができます。
お家で取り組んだいただいた内容は
・毎日のお灸
・23時台には就寝
・毎日のアルコールを控える
・スマホの視聴時間を減らす
がメインでした。
ただ、脈の状態ではまだ「腎」をしっかりしていかなければいけない状態です。
お身体のベースとなる内臓(とくに五臓)を整えていくには、3~4ヵ月は継続した鍼灸が必要となることが多いです。
体調も右肩上がりにどんどん良くなっていく、というより良い時があったり落ちる時があったり、停滞する時があったりと、波を経験しながら徐々に回復していくものです。
継続するのは大変かもしれませんが、その先に不調を気にせずイキイキと過ごせる日々が待っていると思うとがんばれるかもしれませんね。
鍼灸がその一助となれば、うれしいかぎりです。
(あくまで一事例であり、効果を保証するものではありません)
不眠症についてはこちらのページを参考にしてください。