腰痛と不眠にお悩みの方の症例
鍼灸ひののき院長の日野です。
今回は、腰痛と不眠に悩む方の症例をご紹介します。
■来院された方:岐阜市在住、30代、男性
■主な症状:腰痛、寝つきの悪さと中途覚醒、便秘
〇来院までの経緯
もともと腰痛持ちで、腰に違和感を感じながら仕事をしていた。
来院2~3か月前から痛みが強くなり、睡眠の質の低下も気になったので治療院を探していた。
インターネットで検索し、7月に鍼灸施術を受けようと来院された。
〇初回来院時の主な悩み
・朝起きたときに腰が伸びなくて困っている
・腰痛が強くなってきて、仕事に支障が出ている
・不眠や耳鳴りなどもあるため、身体に不安を感じている
・薬に頼らずに良くなりたい
〇現病歴
なし
〇鍼灸ひののきの見立て
初回カウンセリングで生活習慣等もお聴きしたところ、食事の質や早く就寝するなど、健康にはとても気をつけていた。
以前、鍼灸を受けたことがあり東洋医学や施術への理解があったため、自分の身体のことはよく分かっている印象だった。
腰痛持ちであることや耳鳴り、便秘などから、主として「腎・膀胱」の問題があると考える。
腎は、膀胱や腰、骨、耳、大小便などと深い関係があるため、腰痛だけでなく耳鳴りや便通異常とも関係する。
お話をうかがうと、主な症状以外にも爪がもろかったり、筋肉がつりやすい、側頭部から後頭部にかけての頭痛もあるとのこと。
これらは内臓の「肝」が主に関係する。
陰陽の概念で捉えてみると、腎と肝は五臓の中で「陰」に分類されるため、陰の働きに問題があると考えられる。
睡眠の問題も陰がしっかりしていないことが関係する。
仕事柄、長時間車を運転することが多いこと、就寝前に動画を見る習慣があったことなどが影響していると考える。
(※陰と陽についてはこちらを参考にしてください。)
背中を拝見すると、黒ずみが強く筋肉も硬かった。これらも陰が弱いことの表れである。中医学では「血虚(けっきょ)」と表現され、血が不足している状態。
この様な身体は20代くらいからずっと、とのこと。
腰痛などの症状は無くなっても、根本を変えていくには時間がかかることを説明。同意の上、施術をしていく。
〇施術方針
上記をまとめると
・身体のバランス:陽>陰
・主に関係する内臓:腎・肝(厳密には他の臓も関係する)
陰が弱いので、「陰をしっかりさせ余剰な陽を落ち着かせる」
ことが大きな目標である。
そのために、腎、肝を補い、膀胱、胆、胃の熱をさばく鍼をしていく。
〇施術経過
・1~3回目
まずは集中して、2週間に3回通院していただく。
強い腰痛は出ていない。
朝の腰が伸びない感じ、寝つきの悪さ、中途覚醒は不変。
3回目のカウンセリング時、睡眠の質が悪くなったと訴えた。詳しくお話を聴いてみると、睡眠の質が悪くなる前に外食(夕食)が続き、食べ過ぎ傾向にあった。
外食や食べ過ぎは、身体を陽>陰に傾けやすいため、睡眠に影響が出たと考える。
その旨を伝え、お腹の負担を減らしていただく。
・4~6回目
週に1回のペースで通院。
腰痛が気にならなくなって、ほぼ毎日、中途覚醒無く眠れるようになった。
夜の動画視聴を制限しているとのこと。
生活習慣の見直しが効果を後押ししていると感じる。
・7~10回目
腰痛、耳鳴りが軽減し、朝まで眠れている。
便通の悪さが一番気になるとのこと。ただ、施術後は必ず排便がある。
・11回目~13回目
耳鳴りが強くなる。睡眠の質は日により波がある。
風呂で腎の経絡あたりを、アカスリのようにこすっているとのことだったので、止めていただく。
経絡を過度にこすると、その経絡が熱を持ちます。今回は、腎に熱を加えることになり、身体は陽>陰のバランスに傾いたと思われる。
(※経絡についてはこちらのページを参考にしてください。)
・14回目~現在
腰に違和感が出ても、翌日に持ち越すことはなくなった。
耳鳴りはほとんど気にならない。
便通は1回/3日から1日おきに排便があるようになった。
寒さから湯船に浸かるようになり、下肢のかゆみが入浴後に出る。
当初の症状は、全体的に軽減傾向にある。
根本である、「陰をしっかりさせる、血を増やす」を目標に継続中。
〇院長から
日により症状の波を感じながら、徐々に軽減していった。
ご本人もじっくり取り組む意志があったことや、ご自身の身体への理解、鍼灸施術に対しての理解があったので、これまでの経過中は一喜一憂せず、共通の目標に向けて取り組んでいけている。
症状だけでなく、皮ふの黒ずみ方など見た目にもかなり腎(陰)が弱っていると感じた。20代の頃から(もしかするともっと前から)なので、根気よく土台の内臓をしっかりさせないと、またぶり返していくと予想される。
季節の変動も影響していくので、毎回のカウンセリングをもとに柔軟な対応が必要である。
腰痛にお悩みの方はこちらのページを。
不眠など自律神経症状にお悩みの方はこちらのページを参考にしてください。
鍼灸の考え方なども記載しております。