パニック発作が落ち着いた
鍼灸ひののき院長の日野です。
パニック発作で来院された女性の事例をご紹介します。
■来院された方:岐阜市在住、30代女性
■主な症状:パニック発作、気分の落ち込み、首や肩の痛み
〇来院までの経緯
来院1ヵ月前頃から気分の波が大きくなり、パニック発作や首、肩の痛みなど
様々な症状が出現してきたため、来院。
〇初回来院時の主な悩み
・首や肩のコリ、痛み
・気分が落ち込む
・心臓がギュッと締め付ける
〇その他付随する症状
・便秘
・腰痛
・立ちくらみ
・不安感
・イライラ
・動悸
〇現病歴
なし
〇鍼灸ひののきの見立て
・陰陽の視点から
身体の状態を、鍼灸理論のベース「陰陽論」から全体的にみてみます。
この方のパニック発作の症状は、心臓がギュッと締め付けられる。動悸。不安感。過呼吸。などでした。
これらの症状は、落ち着かない状態=動的な状態と捉えることができます。
これを陰と陽で分けると、陽の状態と考えられます。
(陰陽についてはこちらのブログをご覧ください)。
身体のバランスが陽>陰になっていると、頭や首、肩など身体の上部に症状が出やすいです。
首や肩のコリ、痛み、立ちくらみがあることからも、身体のバランスは陽>陰になっていると考えられます。
・内臓の視点から
心臓がギュッと締め付けられる。動悸。などの症状は現代医学の心臓と関係し、東洋医学的には「心-しん」が関係します。
心臓は常に拍動しているため、活動的。陰と陽で分類すると陽の性質が強い内臓です。
反対に陰の性質が強い内臓は「腎」。
腎は陰の性質が強いので、熱を冷ます、潤すといった働きに関係します。
首や肩のコリ、痛みといった症状は、筋肉を潤し柔軟にすることができないから、と捉えることもできます。
便秘も潤いがない状態ですね。
また、腰痛は「腎」が関係していることが多いです。
これらのことから、「腎」の働きにも問題があるのかな、と推測できます。
内臓の「肝」は身体の部位では筋肉や膝、目と関係が深く、感情的には怒りと関係があると東洋医学では考えます。
イライラ、筋肉のコリといった症状は、「肝」も関係していることが分かりますね。
(※内臓については、施術についてを参考にしてください。)
・脈診、腹診から
脈診では、腎と脾(ひとまず胃の仲間だと思ってください)の弱り
腹診からは、血の巡りの悪さ、心(しん)のたかぶり、脾(と胃)の不調
などが感じられました。
〇鍼灸施術の方針
上記をまとめると
・身体のバランス:陽>陰
・主に関係する内臓:腎、心、肝(厳密には他の臓も関係する)
腎と肝の不調は、脾と胃の影響も受けているようです。
身体のバランスを整えるため、腎の働きを高めるとともに、脾と胃に関係するツボに鍼灸をしていきます。
鍼をするツボは、毎回お身体の状態をお聴きして、適宜変更しています。
〇施術経過
・1回目
初回のカウンセリング時に、繊細な印象を受けました。
初回はとくにしっかりとお話しをお聴きし、体質傾向などをみていきます。
「太渓」…腎と関係するツボ、「太衝」…肝と関係するツボと、お腹にある「関元」というツボなどに鍼をする。
繊細そうなので、施術するツボは少なめにして様子をみる。週に1回のペースですすめていく。
・2~4回目
気分の大きな落ち込み、首や肩の痛みが減った。
パニック発作や動悸などの症状は横ばい。
お腹にあるツボ「関元」にお灸をする。
・5~7回目
3週間のうち心臓がギュッとなることは、1回だけだった。
10日に1回、2週に1回と鍼灸をするペースを徐々に空けていく。
・8~9回目
3週に1回のペースで施術をしていく。
パニック発作はなく、気分の波も落ち着き安定している。
・10回目
時々首が痛くなる程度(寝て翌日には消失)。
メンタルは安定している。
症状が継続して安定しているため、治療目的の鍼灸は一旦終了。
今後は不調にならないための「健康維持」を目的にした施術をしていくこととなった。
〇院長から
比較的順調に良くなった症例です。
要因としては、
・早めに来院されたこと(症状がひどくなって1か月後に来院)。
・年齢が若かったこと
・薬への依存度が低かったこと(必ずしも服薬が悪いわけではない)。
・素直な性格でアドバイスを実践したこと
などが挙げられます。
スマホをよく視聴し、夜も布団の中で見る、という生活習慣でしたが、健康のために減らしていただきました。
目への光刺激は、身体のバランスを陽>陰に傾けやすいので、パニック発作も出やすくなります。
鍼灸だけでなく、こういった生活習慣の見直しも健康を取り戻すには不可欠です。
とは言っても、生活習慣を見直して継続していくのはなかなか大変です。
だからこそ、寄り添ってサポートし続けていきます。
また、不調を解消することは大切ですが、不調にならないように身体を整えることも大切です。
当院の施術のメリットとして、
・その方に合った生活習慣の見直し方をお伝えしているので、迷わず実践することができる
・対話をする中で、できたことやできなかったこと、お身体の状態などを振り返ることができる
・対話を重視しているので、不安やもどかしさなど感情を吐露することができる
ことが挙げられます。
このやり取りをくり返すことで、自分で自分をケアする力をつけることができ、健康を維持することが可能となっていきます。
鍼灸のベースとなる東洋医学は、カラダもココロも含めてその人を捉えていきます。
カラダの不調だけでなく、メンタルの不調もご相談ください。
自律神経失調症ページも参考にしてください。
パニック障害について、厚生労働省のホームページに分かりやすい解説があります。