膝の痛みに湿布薬?
消炎鎮痛薬である湿布は、手軽に使える痛み止めです。
消炎鎮痛ですから、「赤く腫れて熱を持ち、痛みがある」状態に対して処方されます。
貼るとスーッとするし温湿布は温かいし、効いている感じがありますね。
「使ってみて膝の痛みは無くなりましたか?」
とお聞きすると
「あんまり変わらないけど、気持ちいいから貼ってる」
と言われる方もいらっしゃいます。
痛みがひどくて動けず、生活に支障が出るうちは仕方がない側面もありますが、
安易に使い続けるのはリスクを伴います。
消炎鎮痛剤を使い続けると、アドレナリンやドーパミンなど交感神経を優位にする物質を誘発することが分かっています。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、
活動的な時は交感神経が活発で、リラックスしている時は副交感神経が活発になっています。
車のアクセルとブレーキの関係に似ていますね。
交感神経が優位になると、心臓の拍動は速くなり血管は収縮し、消化や排せつ活動は抑制されます。
ですから、交感神経が優位な状態が長く続くと、脈が速くなる、血圧が上がる、便秘になる、といった症状に悩まされてしまいます。
血管が収縮するので、血流は悪くなります。
膝はもともと栄養する血管が少ない部位ですから、血流が悪くなれば痛みはなかなか良くなっていかないですね。
痛みを取って健康になろうとしているのに、これでは本末転倒です。
ちなみに、温湿布は温かい感じがするだけで、温めているわけではありません。
冷湿布と同様に血管を収縮させますから、注意してください。
では、これらを東洋医学的に考えてみます。
鍼灸の考え方の根っこには「陰陽」の概念がありますので、
まずは、大きく「陰陽」でみてみます。
(※くわしくは「陰と陽について」を参照してください。)
炎症は、赤く腫れて、熱を帯びている状態ですから、「陽」です。
身体が陽に傾いた状態ですから、陰を増やさないとバランスが悪いですね。
交感神経は車のアクセルの役割=活動的、ですから「陽」です。
本来、陰を増やさないといけないのに、
湿布の長期使用によって身体はさらに「陽」に傾いてしまう
わけです。
血液は液体ですから、「陰」になります。
血流を良くして回復を早めるということは、
陰を増やして陽に傾いたバランスを整える
と置き換えることができます。
次に内臓からみてみます。
不快なさまざまな症状の根っこには、内臓の働きや互いのバランスの問題があります。
(※くわしくは、「施術について」をご覧ください。)
各内臓には、関係が深い身体の部位があり、
膝と関係が深いのは「肝」。
血という液体と関係が深いのは「腎」です。
「膝痛を解消するために、血流を良くする」
ということは、肝と腎の働きをしっかりさせる
ということになります。
ちなみに肝と腎は、内臓の中では「陰」に分けられますので、
このことからも、陰をしっかりさせないといけないことが分かります。
鍼灸施術では、
肝のツボ…太衝(たいしょう)、曲泉(きょくせん)
腎のツボ…太渓(たいけい)、陰谷(いんこく)
などにアプローチして、陰をしっかりさせていきます。
これらのツボは、膝まわりと足首まわりにあります。
また、肝や腎と関係が深い内臓の「胆」や「膀胱」のツボにもアプローチします。
このように、鍼灸では膝が痛いから膝まわりにだけ鍼をする
のではなく、陰と陽のバランス、働きが悪くなっている内臓
を意識してツボを選んで施術をしていきます。