東洋医学の視点-陰と陽
1.陰陽とは
東洋医学は、中国古代の思想家たちが自然界の成り立ちを身体に当てはめて捉えたもので、陰陽の概念もその一つです。日が当たるか否かということから発生してきた考え方といわれています。
その他にも万物は、メスとオス、柔と剛、といった二つの対立する面をもっていると生活の中から考え、それらが陰と陽の概念に統合されるようになっていきました。
自然界での陰陽のイメージをまとめてみると
陰…暗、夜、 月 、寒、水、下、地、静、雌、物質
陽…明、昼、太陽、熱、火、上、天、動、雄、機能
などです。
何となくイメージがつかめたでしょうか?
では、陰陽のイメージを身体に当てはめてみますと
陰…女、内側、腹、下部、五臓、血
陽…男、外側、背、上部、六腑、気
となります。
このように様々なものが陰と陽の二つに分けられるのですが、「陰陽という分け方は、あくまでも相対的なもの」なんです。
例えば、男と女を比べると「男は陽」で「女は陰」になりますが、「男だから陽」ではないんです。よくしゃべる男性(動)と物静かな男性(静)を比べると、前者が陽で後者が陰になります。動が陽で静が陰だからです。
陰陽という分類は、絶対的なものではなく相対的なものです。これを「陰陽の相対性」といいます。
また、人の背中は陽でお腹は陰です。さらに背中でも上部は陽で下部は陰となります。このように陰も陽も、さらに細かく分けていくことができます。これを「陰陽の無限可分性」といいます。
陰陽に分類するうえで、この2つの捉え方は重要ですので、覚えておいてくださいね。
2.陰陽論の特徴
(1)陰陽の対立と制約
陰陽論は、上と下、動と静、昼と夜、熱と寒などのように互いに対立し、制約し合う二つの側面から捉えられています。どちらか一方だけが存在するのではなく、互いが相反したり制約したり補完しあう関係性をもっています。
陰と陽は、相手との関係を通して常にバランスをとっています。例えば、寒いときにはブルブルと震えますよね?これは体を震わして熱を生み出すことで、陰陽のバランスをとっているのです。
(2)相互に依存する
陰と陽の間には、「相手がいなければ自分もいない」という互いに依存する関係性があります。つまり、上がなければ下がないし、下がなければ上もない、という関係性です。
(3)常に変化しながらバランスをとっている
陰陽の対立と制約、相互依存は、静止した不変の状態ではなく、常に運動変化してバランスをとっています。
例えば、四季の移ろいは冬から春、春から夏へと寒い季節からだんだんと暑い季節へ変化していきます。これは陰が徐々に減っていき陽が徐々に増えていくという変化であり、一年を通してみれば全体として陰陽のバランスがとれています。
(4)相互転化
陰陽は、ピークに達すると反対の方向に転化することがあります。陰が極まると陽になり、陽が極まると陰になるという捉え方です。
例えば、夏至という極みを境に陽が陰に変わり始め、秋・冬へと移っていきます。
いかがでしょうか?
言葉にこだわり過ぎると分かりにくく感じるかもしれません。全体的なイメージとして、ざっくりと捉えるくらいが丁度よいと思います。
3.人の身体を陰陽で捉える
自然界をみてみると、夏は暑く冬は寒いのが当たり前です。これは一年を通して陰陽のバランスが取れている状態です。しかし、夏に寒く冬に温かいといったように陰陽のバランスが崩れれば、農作物などさまざまなところに影響がでます。私たちの身体も陰陽のバランスが整っていれば健康で、バランスが崩れればさまざまな症状が現れます。
身体の部位を陰陽で分類してみると
陽…上部、背、左、気、六腑
陰…下部、腹、右、血、五臓
症状を陰陽に分類してみると
陽…発赤、腫れる、熱感がある、かゆみ、のぼせ、便秘、など
陰…青白い、力がない、冷え、食欲不振、気力がない、など
となります。
花粉症を例にしてみましょう。
よくある症状として、くしゃみ、鼻水、目のかゆみがあります。
症状は顔に出ています。顔は身体の上部に位置するので「陽」の部位です。
くしゃみや鼻水、かゆみは身体にこもった熱を外に出したいという働きですので「陽」です。
陽の部位に陽の症状が出ていることから、身体のバランスは陽>陰と考えられます。
また、陰陽のバランスの崩れは
・どちらかが強すぎる場合
あるいは
・どちらかが弱すぎる場合
によって起こります。
鍼灸や漢方では、どちらかが強過ぎればそれを取り除き、弱過ぎれば補うことでバランスを整えていきます。
そのため、陰が弱すぎて相対的に陽>陰となっているのか、または陽が強すぎて陽>陰となっているのかによってアプローチの仕方が異なります。施術の中で肌や脈をみたり、生活習慣を尋ねたりすることによって、身体がどんな状態かを総合的に判断していきます。
また、陰陽のバランスを崩しやすい生活習慣には
・食べ過ぎ・飲み過ぎ
・エアコンの温冷風
・長風呂やサウナ
・長時間のスマホやパソコン作業
・睡眠不足
などがあります。
体調が思わしくない時は、鍼灸施術と合わせてこれらの生活習慣も見直してみてください。